|
<うつ病の研究史 〜精神分析的観点から〜>
W.向精神薬療法と精神分析的アプローチ
私はもちろんここで薬物療法と精神分析的なアプローチを相対立するものとして考えている訳ではありません。統合失調症や躁病、精神病性のうつ病など重症の精神病者の精神分析的アプローチは、薬物療法をはじめとした種々の治療的アプローチと看護を中心とするしっかりしたマネージメントがあって初めて可能となるものです。そうした上で精神分析的なアプローチが深まっていくと、今度は必要とされる薬物の量は少なくてすむようになり、その結果必要最小限の薬物で最大の薬理効果が期待できるようになります(この場合の薬物量が、その病者が生物学的に必要とする至適薬物量であると私は考えます)。副作用がもたらすリスクも最も少なくなります。つまり、薬物療法と精神分析的アプローチは言うまでもなく、相補的な関係にあるのです。プラセボ効果についても知っておく必要があります。私の経験では、大うつ病の患者さんであっても、80%の人がプラセボ効果による中等度改善を示します。これは、他の薬物や疾患には見られない現象です。もちろん、中等度改善から著名改善にまで改善するのに薬物の効果が期待されるのです。
→「抑うつの研究史」 目次へ戻る←
|