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<うつ病とは> ] おわりに 私たちは、抑うつを以上のように理解しました。抑うつとは、対象喪失体験に対して経験される悲哀、悲しみとは異なる病理的な現象、つまり異常な悲哀反応、ないしは病理的な喪の過程であるということです。 他の精神病症状や神経症症状と同じく、抑うつには意味があります。つまり、それぞれの抑うつの成り立ち、理由があるのです。単純に異物として排除してしまうことができるものではありません。ここに収められた臨床論文はそれぞれの症例の抑うつ成り立ちを理解するための彼/彼女との実に真摯な作業なのです。そうして得られた理解が病者だけでなく治療者にも、またその記録を検討する機会を得る私たちにとっても、心の救いとは何かを伝えてくれます。 心の救いとは、苦しみを排除してあたかも苦しみが自分とは関係のないものであるかのように感じたりふるまったりすることではありません。快−不快原則による苦痛の排除ではなく、心の現実を取り戻すことです。つまり、自分の心の中のこととして知り、理解を深めていくことなのです。それが、私たち人間が心を持っている存在であるということの意味、意義であると私は思います。 本書を編集するに当たっては、不安、罪悪感、抑うつ、それから自己愛という問題を吟味する必要がありました。不安と罪悪感という情緒は抑うつと切り離すことができません。そしてよく考えてみると、これらの問題はそもそも精神分析が最初から取り組んできたテーマであり、これからも思考の問題とともに精神分析そのものの中心課題でありつづけるでしょう。心的現実こそが精神分析のすべてであると私は思います。 |