|
<精神分析入門>
6.人類の精神史における精神分析の位置づけ
何故私はこのような話をしているのでしょうか。それは、精神分析がまさにビオンにおいて、人類の精神史上における到達点となっており、また、同時に固有の領域となったと私は考えているからです。なぜならば、フロイトによって創始された精神分析はヘレニズムの伝統の上に成立し、クラインによってヘブライズム・神学的な地平が導入され、ビオンによってウパニシャッド哲学、プラトン哲学、カントの認識論の視点が導入され、精神分析は固有の人間理解を可能にしたからだと思うからです。
精神分析は単に精神医学の一分野でもなければ心理学の一分野でもありません。精神分析は精神分析以上でも以下でもないと思うのです。哲学者は、哲学とは問いに答えることではなく、より深く問うという行為である(より深い問いに即座に答えがないという事態により深く耐えること)と言います。芸術家は、美しさは見えている対象そのものではなくその対象の中にあると言います。そして、精神分析という最も思わしくなく困難な作業に精神分析家を駆り立てるものはヒューマニズムではなく科学的な探究心であると言います。精神分析は哲学と芸術と科学の作る三角形の中で最も心地よい場所を占めていると言えます。
→「精神分析入門」 目次へ戻る←
|