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<精神分析入門>
2.古代インド哲学の視点とユダヤ・キリスト教および日本への影響
このことは比較文化的にも一致します。ヨーロッパ諸語と古代インド語(パーリー語、サンスクリット語など)が共通した特徴をもっていること、逆にイラン方面のゾロアスター教(善神アフラ・マズダ、悪神アフリマンの対立)と、仏教の母体であるバラモン教(宇宙の最高原理ブラフマン)や現在のヒンズー教(破壊神シヴァ、太陽を象徴するヴィシュヌ)が内容的に対称的なところがあることなどです。言語学的には例えばDivineという言葉の多義性が有名です。
古代インド哲学における感覚的現実・見ること(SEE−SIGHT−VIDEO)とヴェーダ(VEDA−INSIGHT)を通して真理(ブラフマン)に達すること、なること・・・この考えは日本の禅にいたるまでの東洋思想の根底にあると思われます。とりわけヒンズー教の教典と言ってもよい大叙事詩マハーバーラタの中のヴァガバッド・ギーターの部分が最も重要な文献です。その中でヴィシュヌ神の化身といわれるクリシュナという神が様々な事を語っています。例えば、親族を巻き込んだ大戦争の勃発を前にしてクリシュナは戦闘開始を迷う戦士アルジュナに対して諭します。結果を顧慮することなく武士としての使命を行為することが真理であると説くのです。こうしたクリシュナの教えはウパ二シャッドないしヴェーダーンーター哲学と共にインド思想の中核にあると思われます。そして、日本には当然のことながら中国思想と混在・融合した形で取り入れられてきました。日本の武士道もヒンズー教の影響を受けている部分があるのではないのかと私は想像しております。
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