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<精神分析入門> 13.まとめ フロイトが精神分析を創始したのはフロイト自身が40歳を過ぎて父ヤコブと死別してからの喪の過程の中でのことでした。フロイトはフリースに対する父親転移の中で父ヤコブに対する愛情と憎しみのアンビバレンスと共にエディパルな超自我不安、抑うつ不安、抑うつ的な罪悪感を洞察していったのです。その後のフロイトの精神分析のテーマはエディプス・コンプレックスの構成成分としての不安、罪悪感、抑うつでした。 アブラハムも父親と死別した後、一晩でその父親と同じ白髪になってしまった体験をその主著「心的障害の精神分析に基づくリビドー発達史試論」(1924)の中に記載しています。 クラインもまた抑うつの理解を飛躍的に進めていった人ですが、彼女自身も持病としてのうつ病がありました。彼女は父親と死別してまもなくの19歳のときに婚約しましたが、結婚生活は幸福なものではなかったこともあり、うつ病を持病とするようになります。その治療のためにフェレンツィの分析を受けることになったのでした。そして自らも分析家としての道を歩むべく、さらにアブラハムの分析を受けるようになったのが40歳を過ぎてからのことでした。そしてこの分析期間中に正式に離婚します。彼女のうつ病理解の到達点となった「喪とその躁うつ状態との関係」論文(1940)も、彼女の息子との突然の死別に引き続く喪の過程の中で書かれたものです。 悲哀の仕事は順調に進むと人をより創造的にします。こころの中での対象の再建と修復、償いが進み、よい内的対象との関係が深まるからです。健康な昇華のメカニズムが働くようになるのです。内的に対象を取り戻すだけではなく、失われた対象と共に失っていた自己をも取り戻します(自己の一部を失っているという感覚がノスタルジアと呼ばれているものですし、精神分析とはこの失われた自己部分を取り戻すための作業と言っても良いのです)。多くの天才と呼ばれる人たちも、何らかの喪の過程を通過した後に創造的な活動性が頂点に達していることが多いようです。無論、精神分析の歴史もまさにそうです。フロイトが創始しその後も多くの分析家によって発展を遂げている精神分析は、それぞれの分析家個人の対象喪失体験、悲哀の仕事の所産であり、また償いの作業による内的対象との深い触れ合いの営みの所産であると言えます。 その初めから、精神分析とは悲哀の仕事そのものであり、悲哀の仕事のコンテイナーでした。そして、「コンテイナーを求め続けているコンテインド」としての私たちの心のコンテイナーとなるべく、精神分析というコンテイナーは今現在も進展し深まり続けているのです。私は、精神分析とは理解という心の栄養を提供する乳房であり、人としての愛に他ならないと思のです。 |