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<精神分析入門>
10.向精薬療法と精神分析的アプローチ
私はもちろんここで薬物療法と精神分析的なアプローチを相対立するものとして考えている訳ではありません。統合失調症や躁病、精神病性のうつ病など重症の精神病者の精神分析的アプローチは、薬物療法を始めとした種種の治療的アプローチと看護を中心とするしっかりしたマネージメントがあって初めて可能となるものです。そうした上で精神分析的なアプローチが深まっていくと、今度は必要とされる薬物の量は少なくてすむようになり、その結果必要最小限の薬物で最大の薬理効果が期待できるようになります(この場合の薬物量が、その病者が生物学的に必要とする至適薬物量であると私は考えます)。副作用がもたらすリスクも最も少なくなります。つまり、薬物療法と精神分析的アプローチは言うまでもなく、相補的な関係にあるのです。
当然の事ながらプラセボ効果についても知っておく必要があります。私の経験では大うつ病の患者さんであっても80パーセントの人がプラセボによって中等度改善を示します。これは他の薬剤や疾患には見られない現象です。もちろん、中等度改善から著名改善にまで改善するのには実薬の力が必要でしょう。
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